自己分析よりも、大切なこと。〜就活生の皆さんへ


もう社会人になってから10年にもなろうとしているので、OB訪問は基本的には受けないようにしていたのだけれど、以前事務所のインターンをしてくれていた後輩からの紹介ということで、久しぶりに学生の面談をした。

曰く、「広告業界には、どのような人が向いていますか?」

自分も就活をしていた時、最初はそういう風だったのだけれど、はじめから入りたい業界を(なんとなく)決めてしまっていて、そこに入るために必死になって情報を集め、そこに自分を合わせようとしている感じがした。

■いつの間にかなってしまう「就活器用」人
就職活動の本には、自己分析の必要性がくどくど書かれている。たいていの就活生はそれに従い、高校や大学での、場合によっては小学生ぐらいからの立ち居振る舞いや活動を振り返る。そして、企業の採用ホームページに「求めるのはコミュニケーション能力」などと書かれていれば、面接の時にこんなようなことを言うのだ。「私はサッカー部の副キャプテンをしていました。全国大会への出場に向けてチーム員一人一人の特性を見極め、適切なタイミングで彼らのモチベーションを高めるような声がけを行いました。私は御社の理念である…」

ここで気をつけるべきは「だいたいみんな、同じようなことを言う」ということである。「コミュニケーション能力」に関わるエピソードなんて自分を振り返ればいくらでも発掘できるし、口がうまければ面接官の興味を引くエピソードも交えることができる。でも、なんか薄っぺらいのは、字面だけを合わせたものだからだ。もちろん、採用する方もそれで採る場合があるから一概に否定するわけにはいかないが、入った後に「こんなはずじゃなかった」と思う人が続出するのは目に見えている。

それだったら、「今やりたいこと」を本気で考え、自分の考え方に合った企業を選んでいく方がいいのではないか。その際のヒントは、社会の中で自分が疑問に思っていることや解決したい課題、それに「こうあったらいいな」と思える未来の姿だ。「社会人」とは、社会と自分との関わり方を常に考え、探り続ける人のことを指すのだと思う。社会起業家などと呼ばれる人のみならず、皆、社会の中での自分の立ち位置を考え行動し、少なからず世の中に影響を与えている。

だから、自己分析で過去を振り返ってばかりではなく、未来を想像し、理想の社会の姿を描き、そのために自分は何ができるのかを考えてみることが大切だと思う。

■自分がやりたいことから発する
やりたいことがはっきりすれば、「企業の理念」などに自分を合わせていく必要はない。自分の思いを実現できる企業を自ら選んでいけば良くなる。「私はとにかく、これを成し遂げたい。(調べたところによると)御社ではこんなやり方でそれに挑戦できると思っている。」と語り、それが企業の方針とぴったりはまれば採用。はまらなければ不採用だ。それでいい。

僕は元々博報堂出身なので、広告業界志望の学生に良く出会うのだけれど、「広告をやりたい」と志望する彼らに必ず投げかけるのは「で、何をしたいの?」という質問だ。広告「を」ではなく「で」。なぜなら、僕にとっては広告というのは目的ではなく、何かを達成するための一つの「手段」だからだ。

学生時代、僕はいろいろな出会いときっかけから、NPOやNGO、今で言うソーシャルな領域を盛り上げたいと思った。当時、NPOと言えば「つましく活動する」「自らは稼がない」ことが美徳とされ、数人のスタッフがボロ家のようなところで働き、デザインされているとは言い難いビラを撒いて自らの活動をPRしているのが一般的だった。

様々なNPOでインターンやボランティアをしていた実感値として、せっかくの「いいこと」も、伝える力と人を巻き込む力がないために、小さな活動に留まってしまっていることに疑問を感じていた。本当なら一万人、十万人、と救える命も、人とお金がないために100人に限られてしまうはもったいないと思った。プロモーションのスキルを身につけたいと思い、悩んだ結果、博報堂を受けた。というより、いくつかの企業に同じ思いを伝え続けて、たまたま採用してくれたのが博報堂だった。因みに、面接で「好きなCMは?」と聞かれて、「ありません」と答えた。

結果、会社に入った後もテーマを持ち、そのために好きなことをやらせていただいて、本当に充実した会社員時代を送ることができた。社内でも「ソーシャル」「ソーシャル」と言い、企画書を書きまくっていたから、そんな仕事をたくさんすることができた。グリーンバードにも出会えた。「まちの課題を解決するため、政治のあり方を変える必要がある」と思い、会社を辞め政治家をはじめたが、たくさんの人に支えられ、今も日々チャレンジングな生活を送らせていただいている。

■大切なのは、悩み続けること
今ある大企業が40年後も優良企業であり続けることは難しい時代にあって、自分の長所とスキル、今後の社会予測を考慮して、次にどのようなスキルを身につけるべきか常に考えるべき、という湯川鶴章さんの主張には大賛成だ。「一生、一つの企業で勤め上げる」という枷を取ってしまえば、湯川さんの言うように、最初はどの企業に就職しても同じ。世の中を知り、社会人2-3年後に再び自分の生き方を考えるのもいいかもしれない。どちらにせよ、勉強は一生必要。ずっと、悩み続けることが大事。でも、せっかくだから時間のある今のうちに、深く深く、社会の中での自分の立ち位置について考えてみて欲しい。

考えて、考えて「ぴったりはまった」企業は、大企業だろうと中小企業だろうときっと自分にとって素晴らしい就職先だし、いろいろ悩んだ挙げ句、自分のしたいことが見つからなかったら、とりあえず就職して探し続けるという手もある。ぴったりはまる企業が見つからなかったら、自分でその事業を立ち上げる、まだ見ぬ仕事をつくるという方法もある。社会のサイズを超えて行く生き方だ。

結果、やりたいことがすぐに見つからなくてもいい。結果、第一志望に入れなくても、続けていればいつか道は拓ける。いずれにせよ、社会と自分の関係を真剣に考えること。未来の働き方を考えるというプロセス自体が大切なんだと思う。

そういえば、僕にOB訪問をした彼女は、こんなことも言っていた。「広告業界を卒業していった何人かの方々の生き方が格好良くて、その業界を志望し始めた」のだという。その気持ち、直感が実はすごく大切なのかもしれない。

大丈夫。希望にあふれてる。
簡単に企業に合わせず、就活をうまく切り抜けようとせず、真面目に、追求してみよう。

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自己分析よりも、大切なこと。〜就活生の皆さんへ への2件のコメント

  1. 長谷川雅春 より:

    殆ど満点、と上から目線。
    一つだけ突っ込んでおきますと、
    「悩み続ける」という能動的な表現は必要ありません。
    やりたいことに執着していれば、厭でも悩みますから。
    悩まなくっちゃいけない、みたいな感覚は必要ありません。

    あと、こうすればああ成る、
    という幻想は早く気付いて捨てることです。
    99%の見込みが立っても、どうなるか分からんものです。
    世の中は皆さんのレベルの善人だけで構成されていません。
    バカが居て邪魔が入るのが必須です。
    君子危うきに近づかないで済ませられれば、それでいいのですが。
    戦士の皆さん、戦い続けてください。

    なんちゃって。

    • ecotoshi より:

      なるほど、勉強になります。今は「嫌でも悩んでる」状態なのかもしれませんね。

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