東京都知事選挙のキーワード。そして選挙後、僕らができること。


東京都知事選挙は昨日がいわゆる「ラストサンデー」。いよいよ、後半戦に突入しました。

今回、僕はいろいろな方とのご縁で、「せんきょCAMP」という政治と若者の距離を縮めるためのイベントの運営をお手伝いしました。六本木ヒルズのイベントスペースなどを借り切って行ったキャンペーンでは、候補者の方にも参加していただきつつ、トークや音楽などで政治の「政」、すなわちお祭りのような空間をつくり出し、若者の参加を促しました。

若者、ママ、LGBTなど普段政治の現場にあまり声が伝わっていない層の代表にも登壇いただき、会場やユーストリームで皆さんと議論する機会もつくりました。彼らは政治や社会づくりに何も考えていないわけでは全くなく、単純に気軽に声をあげる「場」がないんだということが分かりました。

■注目は若者の投票率
「せんきょCAMP」の動きも一段落した今、僕が最も注目しているのは投票率がどれくらいになるかということ。特に20〜30代のそれについてです。

候補者の半数以上が65歳以上の高齢者という今回の都知事選にあって、当初は僕の周りでも「どうぜ若い世代の意見が反映されない」と諦めかけていた人が多かったと思います。ところが、「ハフィントンポスト」にちょっとした驚きのデータが掲載されたことで、風向きは少し変わりました。すなわち、東京都の人口の年齢構成は全国平均と違って、実は30〜40代が一番多いということが明らかになったのです。20代も比較的多かった。つまり、東京では若い世代の人口が少ないから政治に自分たちの声が届かないのではなく、投票率が低いことに理由の一つがあることが明るみになりました。

そして、そんな驚きに重ね、30代の候補者・家入一真さんが面白い動きをはじめました。彼はツイッターでのフォロワーの多さを活かし、インターネット中心の選挙活動を押し進めていったのです。ネット上で政策を集め、多くの若者に協力してもらいつつ、それを具現化していくという戦略をとりました。こうした動きにより、今まで「脱原発」賛成か反対かとだけ言われてどこか置いてけぼり感を食らっていた若者の間に、自分も選挙で盛り上がれる、政治に参加できるという空気が生まれていきました。(家入さんの動きについては、「インターネットが使えない人を排除している」という批判もありますが、僕は全体的としてみれば「多様性」を確保する一つの動きとして多いにアリだと思っています。)

当選するかどうかは別として(お年寄りやリア充ときちんと握手をすれば、可能性はゼロではないと思いつつも…)、家入さんの動きがどれだけ若者の投票率の引き上げにつながるか。マスメディアはまださほど注目していませんが、これは大きなポイントだと思います。これでグンと上がるようなことがあれば彼の功績は大だし、他の政治家の今後の選挙活動や日々の政治活動が大きく変わる可能性がある。

■候補者を選ぶ基準
先の「せんきょCAMP」の中で、僕も細川候補、家入候補と直接対談させていただきました。また、他の候補者についても出来る限り演説を聴きに行ったり、動画をチェックしたりしました。その上で考えるに、今回の都知事選のキーワードは、東京を愛する心、脱原発後のビジョン、そして共感力であるような気がしてきました。

①東京を愛する心
今回はあくまでも東京都知事選挙です。地方選挙です。僕たちが住む、大好きな東京のトップを選ぶ選挙。だからこそ、脱原発賛成か、反対かだけの議論では決して終わらせてはいけない。僕たちがほしい未来と候補者が描くそれがどれだけ一致するのか。候補者がどれだけ東京を愛し、良くしようとしているのかを見極める必要があると思います。東京は多様な人たちで構成されています。だから、老若男女、そして様々なマイノリティも決して排除してはいけません。

②「脱原発」後のビジョン
温度差の違いはあれ、主要な候補者の多くは「脱原発」を唱えています。でも、それだけでは距離を感じてしまう人もいることを、忘れてはいけません。再生可能エネルギーでどんな未来を描くのか。その後の生活は、ライフスタイルはどうやって変革していくのか。旧態依然とした政治の仕組みをどう変えていくのか。僕らはその「夢」を聞きたい。そして話し合いたい。「せんきょCAMP」での僕との対談の中で、経済学者の金子勝さんはこうおっしゃいました。「脱原発後の東京と地方の関係、それに小規模分散型社会の展望を描ける人が今の東京には必要だ」と。

③共感力
最後は「共感力」です。僕は今回、候補者たちがどれだけ僕たちの声を聞いてくれるのか。聞く耳をもっているのかを選ぶ基準の一つにするべきだと思っています。選挙は候補者たちにとって数日間に有権者に思いを届ける短期戦。正直、彼らの短い間に完璧な政策などつくれませんし、選挙の過程で届けられた意見を一つ一つ吸い上げるのは難しいでしょう。だから候補者に大切にして欲しいのは、選挙中も選挙後も声を聞き続けるという姿勢です。特に、「声なき声」に耳を傾ける努力を続けて欲しい。ビジョンや施策を上から押しつけるのではなく、そうした声を聞き、柔軟に考えを変えていく気構えが求められているように思います。
※Twitter上で候補者へ質問を集め、答えてもらうキャンペーンなどもはじまっていますよね。その「答え方」には注目です。
http://asktokyo2014.com/

■選挙後も、僕らの声を届け続ける。
言うまでもなく、政治家は偉くもなんともありません。これまでのように、各種団体などの声の大きい人たちばかりの意見を聞き、その代わりに票を求めるという政治家と有権者の関係はもう終わりに近づいています。政治家は多様な価値観を尊重し、若者の「声なき声」も含めた多くの意見を聞いた上で、大きな方向性を示す。そしてそれに共感した人たちが知恵を出し、政治を通して、あるいは町会・商店会やNPOなどの活動を通じて積極的に動いていく。そんな新しい政治家と生活者の関係性を、今こそつくる時だと思います。そこに、僕も一役買っていきたいと思っています。

拙著『「社会を変える」のはじめかた』にも書きましたが、最も大切なのは、選挙後も僕らが継続的に声をあげ続けることです。思い通りの結果にならなかったからといって絶望せず、また選ばれた政治家がちょっとでもミスをすればすぐにひきずりおろすのではなく、僕らが責任をもって気長に育てていく。そしてその過程で、どんどん僕らの声を取り入れてもらう。さらに、次の統一地方選挙に自ら立候補するという選択肢もある。

誰に投票するかより、誰が投票するか。とにかくまずはこの選挙、みんなで考えに考えて、楽しみに楽しんで、盛り上がっていきましょう。

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